楽しかったです。
改めて、主催者様、参加者の皆様、お疲れ様でした。初参加のため、特に探偵の方々には、サイトまで足を運んでいただく等、沢山お手数をお掛けしてしまいました。
五月から七月まで二ヶ月って結構たっぷり時間あるなあと最初は思っていましたが、何のことはなくあっという間でした。拙作に目を通していただいたり、感想や推理を読ませて(書かせて)いただいて、望外の収穫が得られました。参加して本当によかったです。
あと主催者様、〆切伸ばしてくださってありがとうございました。あの恩情措置がなければ確実に投稿間に合ってませんでした。重ねて感謝を。


後書きテンプレート

■作者名
三樹

■サイト名&アドレス
縷々 http://1ru.deci.jp/

■参加ブロック、作品番号、作品タイトル、作品アドレス
A07「最果ての巫女」 http://hkmn.html.xdomain.jp/blocka/a07.html

■ジャンル
人外ファンタジー

■あらすじ
王国を護るため、辺境の孤城に幽閉された薄幸の巫女姫。
命を救われ、慈しまれて、彼女を慕う一羽の妖魔。
種族を越えた壮大な恋物語が始ま…らない。

■意気込みテンプレを使用された方は、URLを教えてください。
http://b.1ru.deci.jp/?eid=42

■推理をかわすための作戦は?
初参加者は初参加者なりに、なるべく探偵さんに与えるヒントは少なくしておきたいなあと思ってはいましたが、思うだけでさほど擬態はできていなかったかと。題材からして全然隠れられてませんし。

言葉選びは特に素のまんまでしたね。提出してから読み返してみると、頻繁に使ってる言い回しとか台詞の配分とか、もう恥ずかしげもなく多用してて、自分で(うわあ…この人企画の主旨分かってる…?)てなりました。

あとは、普段より大幅に糖度を上げたりもしました。
二人の間の好意のレベルを引き上げないと、恋の贈歌・返歌の真似ごとのような遣り取りが浮いてしまうというのもありましたが、私あんまり、真正面からいちゃつかせるのが得意ではないのでいつもは避け回ってて…なので、ほかにどなたか、恋愛ものをよく書かれる方が同グループにいらっしゃったら、撹乱くらいにはなるかな…と。

いつもは読みのバランス考えて崩しているような漢字を、そのままにしたりもしていましたが、普通に読みづらいだけになってしまったなと反省しています。
ルビ振るなり言い回しを変えるなり、やりようはあったはずなんですが、ちょっと最後に時間がなくてブラッシュアップする前に力尽きてしまって。
拙宅に収納する用に今、細かい箇所でだいぶ加筆と手直しを入れてます。


■この企画のために書いた作品、他にもありましたか?
別作品ではないですが、話のパターンはほかにも大まかにいくつか考えて(この一編に顔出す登場人物も当初はもう少し多い予定でした)、そこから取捨選択して、ざっと清書して、最終的に提出作品としての完成形になった感じです。
灰白が梟にまことの名前を教えてしまう展開も、一応大雑把な下書きだけは作りました。

■その作品を提出しなかった理由は?
短編作品としては、まことの名前を明かす展開の方が劇的で、物語として平板にならずに済んだのかなあ…とは思うんですが、どうしてもこの膠着状態の悲恋という形式が手放し難かったのと、もしも教えるとしてもこの二人はこの段階でじゃないだろうな、と思ったので。
何か、全然関連のない別のキャラの別の短編に流用するかもしれません、あの状況で名前を教えてどうなるのかのバージョンは。


■作品のネタを思いついたきっかけは?
漠然と、美女と野獣+ロミジュリ+千夜一夜物語みたいなのが書きたいなーとはずっと思ってて、企画のお題を見て、少しずつイメージを膨らませていきました。
満月の下で、花を贈られた儚げな姫君の手、その手を外側から包み込んでいる化け物の手、みたいな構図を最初に決めて。

実は最初は平安時代ものの和風微ホラーの予定でした。

”秧討政争に敗れて都を追われた没落貴族の姫君(皇妃候補ですらあった)のもとに、どう見ても草深い流刑地にはそぐわない天人のような貴公子が夜な夜な、手を変え品を変え言い寄ってくる。怪しみながらも、孤独感と寂しさからだんだん心を許していってしまい、名前を教える(=求愛に応じる)ことをせがまれて揺れる。
都から付き従ってきた忠実な奴婢の少女が、近ごろ姫君の様子がおかしいことに気付き、ある晩こっそり見張っている。すると、名状しがたい姿の怪鳥が姫君に取り憑いて誘惑しており、絶句する。止める間もなく姫君が名前を明かしてしまう。
飛び立つ羽音と共に姫君はさらわれ、行方も生死も知れない。

という二部構成を予定していたんですが、口説くなら相聞歌っぽい遣り取りがほしいとか、ヒロインの聖性をもっと上げたいから斎王や斎皇女の属性を付与したらどうなるかな?とか、正体不明の怪鳥よりも鵺とか特定の妖怪にした方が面白いかなとか、斎庭で怪物の仔どもが生まれたりしたら末法の世っぽいよな…とか、あれこれさんざんいじり回しているうちに、なぜか気付いたら肝心の日本設定がどっか行ってました。

構成の話になりますが、,嚢佑┐討拭幻惑されている姫君の視界での夢見がちな美辞麗句の応酬が気に入ったので、思いきって△梁臠召鮑錣辰燭雖,氾合したりして、ロマンスを前面に出すことにしました。仝諺曚鉢現実で一組だったものを、マイルドな幻想部分だけ残した形です。

世界観もキャラクターももう全く原形をとどめてないんですが、鳥系妖魔だったり、姫君に奴婢の要素が混じってるのは、初期案の名残りだったりします。王族の末裔の巫女とか、鵺みたいなキメラの化け物とかは、まだ和風ファンタジーだった頃の中盤の案の反映ですね。

ちらっと感想でご指摘いただいてたんですが、自分の拙い言葉から、舞台演劇っぽさや戯曲みたいな雰囲気がかすかにでも、ほんのわずかでも表現できていて、それが読み手の方に伝わっていたならそれでもう充分…この作品でやりたかった課題は達成できたかなと、自分では思っています。
ロミジュリの、初々しく愛し合う二人の周囲にどんどん血が流れて男たちの死体が積み上がっていく怖さとか、彼らの恋路の終着点が腐臭漂う納骨堂の闇であるところとか、ロマンスの暗黒面の部分を、自分の作品でも…におわせられてたら…いいんですけど…

便宜上、純愛っぽくまとめましたが、根っこのところはかなり血生臭い話のつもりで書いていました。
灰白も梟も、自分のために非業の死を遂げた母親の屍を踏んでいて、この両者が疑似母子関係を結んでいる歪さが、話の底流にあります。

と同時に、なんていうのかな、蝉の抜け殻がうじゃうじゃついた木の枝を子どもが、お母さん喜ぶかな?って渡しに来て、お母さんも内心ウワア…ってなりながらも、子どもがうきうき見上げてくるので何も言えずに苦笑いしながら受け取る…みたいな話でもあります。
歪は歪なりに、壊れたままでも、ときどき明るいものや笑いを拾い上げながら、日常は続いていく、みたいなことも言いたかったかな。

あとは何だろう…言霊を重視して、呪詛を恐れて、近しい人以外には本名を伏せる古い習俗って、私が知ってるのは日本のものですけど、ほかの国や地域にもあるんでしょうかね。君の名は…のような。女性が自分の名前を明かす=求愛・求婚の承諾、という…。
名前の扱いは、『千と千尋』が死ぬほど好きなので、あのあたりの影響はあるかも…。

あ、人の母と人外の子の、不穏な疑似母子関係で一番好きなのは『ナウシカ』の原作漫画です。ナウシカとオーマ。あれも名前をつけることによって…という仕掛けが堪らない作品ですよね。


■ストーリーの構築において気を使った点、苦労した点などあれば教えて下さい。
ストーリーと呼べるほど話が動いていないので、特に工夫なども、あってないようなもので…。
ひたすら台詞で過去を振り返ってぐずぐずさせてます。

総集編のようなイメージでした。長い物語のなかの、中盤の一場面という位置づけで。
とにかく情報を要約し、これまで何があったのかを伝達することにだけ集中させました。戻れない過去を恋しがりながら(主に灰白が)、思いきって未来にも進めず足踏みしているような状態の二人の一幕なので。

設定だけはなるべく沢山思いつくままに作り置きしていたので、そこから6000字分、どこをどんなふうに切り抜くかに一番時間が掛かりました。
もっと童話に近い語り口にする案もありました。王国だし。お姫様出てくるし。怪物もいるし。「昔むかし、ある王国に、灰白姫というおひめさまがおりました。灰白姫のお母上は、毒を呑まされて死んだのです。お母上の亡骸は、まっくらな奴隷たちの墓穴に投げ捨てられました。」みたいに。
ですが、一番醸したい雰囲気出しつつも、説明文ありったけ詰め込んで大丈夫そうなのは、このまだるっこしい長台詞の連投かなあと、最終的に判断しました。

こちらの形式にしたのは、この、相手に対してとにかく大仰に過剰に比喩・修飾して褒め称える千夜一夜物語調が書いてて楽しかったというのもあります。
だいたいの元凶は、小学生の頃に読んだダイアナ・ウィン・ジョーンズ『アブダラと空飛ぶ絨毯(ハウルの動く城2)』の台詞回しです。それから、古川日出男『アラビアの夜の種族』、タニス・リー『平たい地球』シリーズ、キャサリン・M・ヴァレンテ『孤児の物語』あたりの、アラビアンナイトモチーフ作品の古雅な文体への憧れが強いかな、と自分では思っています。自分では。
推理のヒントになってしまうかな〜とびくついて意気込みテンプレには入れませんでしたが、この四作も断トツで好きな作家・作品です。


■削ったエピソードなどありましたか? 作成裏話歓迎です。
削った部分が多くて、むしろ削りに削って残ったものがこの短編とも言えるので、取り敢えず現時点で出しても大丈夫そうな設定などをつらつら並べていきます。ばらばらに書いてたメモを引っ張ってきて繋ぎ合わせてるので、語尾が丁寧語とそうでないのが混ざってたり、言葉が雑だったりで、読みづらいかも。むやみやたらに長いです。
また、一応まだ暫定的な設定なので、今後変更される可能性もあります。

先ほども軽く触れましたが、斎の皇女・鵺・伏せられる本名といった和風の基礎に、妖魔・奴隷・後宮(ハレム)といったアラビアンナイト要素を上塗りしていった、ごちゃまぜな、でたらめで大雑把な「遙か東方の異国」「東洋」な世界です。国王と書いて「スルタン」とルビ振る感じの。
でも、巫女を出す以上どうしても多神教設定で固めてしまったので、イスラム色を出すに出せなくなって、このへん曖昧になってしまって、若干迷子になってすらいるような…。
東洋産である「孔雀」「真珠」を用いた例え、祈祷句っぽい「泉下のお母様〜」の口上、梟の真名「ズムルードゥ」(アラビア語でエメラルドを意味する「ズムッルド」から)あたりで悪足掻きしてはいるんですが、分かりづらいですよね。
加筆でもうちょっと補強できるかな…植生とか、建築様式とか、灰白の服飾とか、まだ書き込めそうな余地はある気がするんですよね。

強いて言えば、もっと時代錯誤な(西洋視点の)オリエンタル観を増し増しにするというか…もっといかがわしく色っぽくしてもよかったような気もするんですが、書いてるうちに、あれ?これぎりぎりでプラトニックに踏みとどまらせた方が逆に緊張感出るな…?と気付いて控えました。

灰白について。
通名は灰かぶり+白雪姫から。
気まぐれに父王の手がついたことにより奴隷から妾妃に格上げされたとはいえ、それでも母妃の身分がほかの名家出身の妃たちに比べて物凄く低いので(このへん実在の宮廷ハレムの構造とはかなり変えてるんですが)、王女とはいえあまり華美な名前にならないようにしました。
名は体を表すではないですが、王宮でいかに彼女がないがしろにされてたかの証左にもなるようにしつつ、名前通りの、控えめな、慎ましい、いわゆる古典的な性質の姫君です。シンデレラとか落窪の姫君とか、昔話の姫君って何か…虐げられてなんぼみたいなところあるじゃないですか…(偏見)。
十五、六歳くらいかな…おぼろげで地味な存在であることを強調したかったので、容姿はなるべく描写しないよう気をつけました。

王の血を引きながら、奴隷から産まれたと我が子が周囲から蔑まれるのを悲しんだ灰白の母妃が、せめて無学卑賤な自分とは異なる姫君らしい教養をつけさせようと苦心した。
王女として何か一つでも並外れた才能を示せば、母子を顧みようともしない父王がもう一度目を向け、よるべないこの子の後ろ盾になってくれるかもしれないという期待もあり。
詩歌にせよ音楽にせよ、一流の師範たちに厳しく指導された技芸の才は、どれもたいして抜きん出た成果は見せず、結局人並みの域を出なかった。だが、灰白を唯一慈しんでくれた母妃の死後も、辺境の神殿に幽閉されてからも、姫の孤独を慰め、昔を懐かしむよすがとなっている。

今回は出しませんでしたが、灰白のまことの名前はラピリスといいます。
さっきもちょろっと言いましたが、ズムルードゥがエメラルド由来なので、こちらも何か宝石名をいじった真名にしようかと考えて、じゃあラピスラズリからで、となりました。

まことの名前について。
言霊とか、言葉には魔力が…とか、言ってしまうと仰々しいですが、要は作中で灰白と梟が遊び半分にしてることです。
舌戦というほど激しいものではないけれども、言葉を過剰包装的に飾って言いくるめたり、逆に包み隠さず地金を覗かせてひるませてみたり、とにかくいかにして自分の望みや意向を呑ませるかという駆け引きですね。
まことの名前を知っていれば、より照準が合わせやすくなり、相手の心を支配しやすくなります。

大昔の強大な魔術師たちは、その「言の葉の魔法」「呪文」で他者を自在に操り、一族郎党を殺めさせたり、財宝を持ってこさせたり、軍勢を掌握して戦争を引き起こしたり、残虐な所業をなした。そのような伝説が各地に山のように残っている。
とにかく人の心を駒のように操作できるので、向かうところ敵なしで、魔術師の共同体が世界の覇権を握っていた時代もあった。ところが、あるとき突然魔術師たちの都が原因不明の大災害に見舞われ、壊滅してしまう。名立たる魔術師には一人の生き残りもなく、壮麗だった都の址には呪われた太古の森が広がり、長年に亘る魔道の叡智もほとんどが失われた。
権勢をふるった大魔術師たちの脅威は過去のものとなり、灰白と梟の時代には、すでに言の葉の魔法もまことの名前の呪力も大部分が形骸化・弱体化している。
今やたいした強制力はなく、思考を多少誘導させる程度で、下手をすれば迷信やまじないの類いにまで落ちぶれているが、それでも、例えば面と向かって名指しで「○○、死ね」と言われたら気分を悪くしたり冷静さを失ったり、人によっては衝撃を受けた挙句に実際に死んでしまうかもしれない。そういう呪詛から身を守るために(また、大昔に姿を消した魔術師たちにかつて何をされたかという伝承や恐怖心がまだうっすらと民間に残っているので)、真名を伏せて通名を使う風習はまだ生きている。
効力がかなり弱まり、危険性もかつてほどではないとはいえ、簡単に他者に、ましてや妖魔などに明かしてよいものではない。
真名は、親が子どもにつけるのが通例だが、裕福だったり高貴な身分になると、霊験あらたかな僧侶や神官に依頼することもあるようだ。昔は、王族の名付けの儀式を執り行なった神官は名誉と引き換えに死を賜ったり、舌や腕の腱を斬られて以後喋ったり書いたりできなくされたりすることもあったらしい。
子の真名を親が握ることが多いということは、まことの名前が強い拘束力を有していた時代、良心的でない親を持った子の運命は悲惨だった。また、そのため親殺しも多かったという。
ちなみに、灰白の名付けは、序列が低く、世継ぎになり得る男児でもないために放置され、母妃が行なった。灰白の真名は母親の遺品の一つとも言える。

作中で、灰白も一度だけ真名の力を行使しています。
「ズムルードゥ――どうか聞いて」の部分です。
まじないどころかお願いの部類ですが、熱くなりかけた梟をひるませ、一旦制止させるだけの効果は辛うじてあるようです。

養い親と子という上下関係・まことの名前を握られているという障壁があっても、梟が力ずくで思いを遂げようとすれば、現状のままでも可能ではある。
真名を呼ばれて抵抗されれば気も削がれるし引かざるを得ないが、梟と灰白の腕力の差があれば口をふさいでおくなり、喉を潰すなりして、声を出せなくするのは容易いので。どんなに灰白の前で猫をかぶっていても所詮彼は人外の種族であり、人間界の倫理観ごときには縛られていない。
とはいうものの、梟は灰白に慈しまれながらはぐくまれた若者で、灰白への好意もそこから立脚している。
言葉で通じ合っている自分がよりにもよって彼女の言葉を封じて危害を加えた場合――自分のほかに話し相手のいない、心のよりどころもない孤独な灰白の信頼を踏みにじった場合、彼女は自害してしまうのではないか。それを梟は予想し、危惧している。
できるけどしないことに意味があって…傷付けたり嫌われたり、悲しい顔をさせるのは本意ではないので、何とか手順と段階を踏んで、灰白の言質をとった上で関係を対等にもっていこうと画策している。人間をまねて。

梟について。
通名は、この鳥の異称が「母喰い鳥」であることと、夜行性・猛禽類であることから取りました。(灰白がそう名付けたのは、拾ったばかりの雛鳥時代があまりに弱々しかったため、強く賢く育ってほしいと願って)
哺乳類の胎内から産まれた鳥類(をベースにしたキメラ)。性別はどちらかといえば男性寄り。もし仮に灰白の恋愛対象が女性であれば、ちゃっちゃと女性体になるくらいの揺らぎのある鵺的・流動的な体質です。妖魔だしわりと自由に何でもありでいいかなって…妖魔だし…。
人間の灰白に合わせて、本人はなるべく人間の男に似せて自分の身体を成長・変異させているつもりですが、キメラのつぎはぎ感は否めません。

「最果ての巫女」の役割や聖域について。
森の瘴気に最前線で触れ続けるため、基本的に巫女は短命。(対して、妖魔は成長こそ早いが長命。不老不死に近いが、死ぬこともなくはない。死ぬというよりは経験や記憶、肉体年齢の消去・初期化に近い)
本来、守護の結界が弱まる新月の夜を除き、妖魔は聖域に侵入することはできない(新月であっても妖魔にとって居心地のよい場所ではないので入ってくる者はほとんどいない)。梟は幼児期に聖域の食物を灰白に与えられて育ったため、例外中の例外。その梟も、入れるのは庭園までで、聖域にある神殿の建物内は不可侵。
「最果ての巫女」は本来、国王と神聖な婚姻を交わした正妃の産んだ王女、そのなかでも特に霊力の強い娘でなければならないが、実子を死地へさしだしたくない正妃の謀りごとによって、最も立場の弱い外腹の灰白姫が身代わりに選ばれてしまった。
正統な巫女姫ではないため、太古の森に対する王国の抑止力は大幅に弱体化しており、胎児とはいえ妖魔が聖域に侵入してしまったのもこのため。
ついでに言えば、王国を守護する生きた要石である巫女姫が、妖魔と折にふれて直接触れ合ってるのも非常にまずい事態。
以後、王国もこれまでは食いとめられてきた太古の森の侵攻をじわじわと受けることになる。

あと、歩く猫さんが後書きで姫の神殿生活について触れていてくださっていたのがはちゃめちゃに嬉しかったので、それについてちょっとだけ詳しく。

外戚も後ろ盾もない灰白に、人外境まで付き従って死ぬまで仕えてくれるような女官はおらず、母妃に忠実だった身分の低い乳母だけが唯一同行を申し出た。だが、病気がちな彼女を自分の不運に巻き込むのは忍びなく、灰白は一人、神官たちの輿に乗せられて辺境まで運ばれ、城に入った。

ほかに世話をしてくれる者がいないので、神殿に常駐している仕え女たちが灰白の衣食住の面倒を見ている。
「腰帯」「櫛」「林檎」という通り名の三姉妹だが、灰白とは一言も口をきかない。食事を作ったり、衣服を洗濯したり、廃墟の居住区域を最低限掃き清めたり、巫女姫が死んだ場合は埋葬や王宮への伝達など、神殿の雑事を黙々とこなしている。

あるときは三人とも腰の曲がった老婆の姿をしており、あるときは三人揃って匂やかな美女の姿で、あるときは三人の年端もいかない少女の姿をして、灰白の視界の隅を横切るが、絶対に向こうから接触しようとはしない。
黙りこくったままだが、灰白が呼べば一応言うことは聞き、命じられた通りに動く。口がきけないわけではなく、姉妹で互いには会話をしている。だが、巫女姫とは頑として言葉を交わさない。理由は不明。
噂では初代の巫女姫の時代から神殿にいるらしく、明らかに人間ではないが、妖魔とも自動人形ともつかない何者かである。無表情が基本。

庭園に侵入して出産した牝鹿の死体を、灰白に頼まれて淡々と片付けたのも彼女たち。
梟の存在に勘付いている節はあり、清らかであるべき巫女のもとに妖魔が接近していても、特に阻んだり王宮に密告したりすることなく、静観している模様。清浄な神殿に仕えている以上、森の息がかかった異形ではないようだが、必ずしも王国の味方でもないらしい。
かといって巫女に肩入れしているとも思えず、気を許せそうもない得体の知れない者たちとして灰白は認識している。

この謎の婆ちゃん?三姉妹が、糸車を回したり料理鍋を掻きまぜたり薬草を揉みつぶしたりしながら、王国とか森とか巫女姫に関して意味深にぼそぼそ鼎談するエピソードを短編の冒頭にもってきたかったんですが、字数制限に阻まれて存在自体がなかったことに…。

あともう少し、ちょこちょこ言いたいこともあったような気がするんですが、さすがに長すぎるだろうしこのくらいで。また思い出したらツイッターあたりで補足します。


■その作品の続編または長編化のご予定は?
そのうち長編で書いてみたいという欲はあります。というか、そもそも短編向きの設定じゃなかったですね、これ。企画提出だと思って気合い入れ過ぎて空回ってた感が甚だしいですね。

書くのであれば、灰白の都下りか聖域に入城するシーンあたりから、ちゃんと書きたいです。この薔薇の後、二人がどうなっていくのかも含めて。
ただ、遅筆の中の遅筆なので、恐ろしく時間が掛かると思います。あと、この台詞の文体維持して長編書くとなると、もっと語彙や知識を増強させないといけないので、資料集めや読み込みもじっくりやりたいなと。

設定あれこれ作ったり展開を妄想したりするのだけは好きなんですけど、それを元に実際に手を動かすとなると滅茶苦茶燃費悪くなる体質なので、もしも万が一長編化を待ってくださることがあれば、どうぞ気長にお願いします。


■その作品で気に入っている箇所はどこですか?
一番最初の、灰白があずまやから跳び出して嬉しそうに梟のもとに駆け寄っていくところ。
王宮では絶対こんなふうに走ったことないですよこの子。小さい頃から人の目を恐れて厳しく躾けられた姫君だから、上品にしずしず歩く訓練しかしたことないんじゃないかな。
文化の粋美が集められた都から無残に追われて、灰白の手から奪われたものも多いけれども、辺境に来てはじめて得られたものも少なくない…という一場面です。


■推理期間中、褒められた点は?
耽美とか…文章とか…? 

■推理されてみて、いかがでしたか?
早い段階でばれてしまいましたが、推理過程とか根拠とか、拝見させていただいてると本当に興味深かったです。なるほど、そういう癖が私にはあるんだなあ、ということが指摘されて始めて確認できたりもしたので。普段自分のサイトに引き篭もってるので、自覚症状ないことが多くて。参考になりました。

■あなたの作品だと推理された作品はありましたか?
一、二票ずつですが、主にファンタジーや不思議系のお話に。

■あなたの作品が他の方の作品だと推理された作者さんはいましたか?
四、五人の方に少数票が。結構印象推理と最終推理で顔ぶれが入れ替わった感じですかね…?

■推理してみて、いかがでしたか?
■あなたの正解率、どのくらいでしたか?
手が空くのが遅くて、目を通して感想までで息切れでした。でも、終盤の、探偵さんがたの熱い追い込み推理は物陰から拝見させていただいてました。

■この企画に参加して、改めて気づいたことはありますか?
隠れなきゃいけないってのに、気付いたら身体が勝手に人外ファンタジーを書いていたこと。怖…。


■参加作品の中で印象深い作品をあげてください。
B02 フーガには二つ星を連ねて
C07 迷い子の手
E05 キズアト

■参加作品の中で印象深いタイトルの作品をあげてください。
B04 マリー・アントワネットの手を取って
C04 なにも宿らない
D03 couturiere

■参加作品の中で面白かった3作品&一言感想、お願いします。
ちゃんとした真面目な作品批評やコメントは、たぶんほかの参加者さんがいっぱいしてくださってると思いますので…(他力本願)。
突然ですが、私は作中に生き生きした肉球や羽毛や鱗が出てくるとだいたいテンションが五割増しくらいになる人間です。
ところで、オスカー賞の裏に、動物保護団体が作ったPawscar賞というのがあるらしくてですね、映画に登場して活躍した動物たちを称えるものだそうです。今回、企画作品を読ませていただいて、主役脇役に沢山の魅力的な動物たちをしこたま鑑賞できて個人的に満腹になったので、私はそういう視点で行こうかなと。当然ながら3作品には収まりませんが。
これってアニマル枠に入るの…?という判定はかなり恣意的なものになっています。悪しからずご容赦ください。
私の残念な記憶力のせいで、この作品のこの超重要動物見落としてるぞみたいなのがありそうで、ちょっと怖いんですが…あった場合、こそっと教えていただければ幸いです。

A08 巡り巡って より クジラ
共同で子育てするクジラの群れの生態を連想して、シンボリックだなあと…生きたものでもなければ、絵の中の、しかも観る人によって変わる存在なんですが、印象深くて。

A10 ハンスと五本指の魔法 より 白鹿(大鷲、狼)
お伽噺といえば躍動感のある動物が欠かせない。というか、動物文学が昔話の一側面と言ってもいいような。例に漏れず、この作品に登場する動物たちもどれも魅力的。

B07 イハンスにやらせろ より ヨーイ
いい子、ヨーイ(ジナンナさんの真似)。よーしよしよしよし。熟女犬って本当にお茶目で優しいんですよね。美味しいもの食べさせてもらって、長生きしてね、ヨーイ。

B08 花咲と白い犬 より 不知火
可愛いわんことイケメンの兼業だけでも強いのに、全裸首輪で残念なイケメン属性まで付けてしまう…つわもの…。

B10 ローマでも長安でも洛陽でもない、ある都の休日 より 馬
馬やんも騎尉くんも人生のターニングポイントには馬。二人の出会いにも馬。もうこれは馬が主人公と言っても過言ではないのでは(違います)

C02 月下鴨川、モノノケ踊りて、絵師が狩る。 より 猫又
テンテケ、テンテケ(癖になるリズム)。どこか滑稽で剽軽でありながら、たち悪く人間をもてあそんで古傷をえぐっていく、まさにモノノケ。

C09 プディヤの祈りは銀の蝶になって より 銀の蝶、炎龍鳥
土着の文化に織り込まれてる生き物っていいなあ…蝶も鳥も翼を有して飛翔する存在なんですよね。高地に根を張って暮らす人間の一族との対比になってるのかな。

D02 神の庭 より 神獣
初読のときの印象は、ワンダと巨像の巨像くらいの無機的な感じだったんですけど、もっと生体寄りなのかな。考え出すと空想が止まらなくなる。

D06 ヴォストーク・デイ より コウテイペンギン、アデリーペンギン
苛酷なストーリーにおける最期の慈悲としてのペンギンの可愛さが心に突き刺さる。幻覚でもいい、フリッパーばたばたさせながら二羽でどこまでも歩いていってほしい。

D09 てとてとて より テトちゃん
肉球。にくきゅう。一言しか言及されないのにニューロンに衝撃を走らすテトちゃん肉球装備も、真面目な企画会議とかで決まったんですよきっと…誰だよ発案者…天才…。

D10 吾輩はルンタくんである より ルンタくん
テトちゃんアニマル枠にしてルンタくん割愛するのは私の中のルンタくんファンクラブが暴動起こしそうになったので。肉球も毛皮もないのにこんなにも可愛い。

E01 銀の御手のサジタリウス より 一角獣
自分のユニコーン経験値がまだ低くて、『レジェンド/光と闇の伝説』とかハリポタ経由の知識しかないんですが、美し過ぎて却って不吉さを帯びる獣って絵になりますね…

E07 楽園の手 より 鳥
振りきれた弱肉強食に爽快感すら覚える。ベジタリアン設定? そんな甘っちょろいものはない!! に尽きる、おなかを空かせた鳥さんたちの元気な食事風景。

E09 夜の谷で より 魔獣、魔物
倒された魔獣の姿形について語られることはなく、ただ、人から変わり果ててしまった巨大な魔物だけが静かにそこにいる…という、この、もう最高としか言いようがない。

E10 夢の異世界ダンジョンへGO! より うりんこ
うり坊のことうりんこっていうんですね、知らなかった。アニマルというよりクリーチャーなんですけども、躍動感とスピード感がやばい。