ツイッターに流していたものを軽く手直ししてまとめました。
感想のピントがずれてたり、妄想が混じってたり、盛大に誤読しているかもしれません。悪しからずご容赦ください。

C01 その手が隠したものは
平和な午後の銀行に、痛すぎる中二病が降臨するシュールっぷりに笑う。強盗然とした強盗なら銀行側もマニュアルがあるだろうけど、そりゃこんなの来たら気を呑まれるかも。キャラの要素を盛り過ぎるとかえって記憶に残らないという創作論を、この中二病山盛り偽装工作で思い出したり。

C02 月下鴨川、モノノケ踊りて、絵師が狩る。
上質な古都妖異譚が五臓六腑に沁み渡る。何気ないやりとりに気の置けない二人の関係性がうかがえて心なごみつつ、飄々としながらも陰を帯びる詩子さん、自虐的に「敵対者」と称してしまう七森君が悲しい。他の妖怪や京都の怪奇スポット等を絡めて、できればシリーズ化してほしい逸品。

C03 死の手招き
作品はあくまでも作品で、作者を必要以上にリンクさせて考えるのは視野狭窄の危険有りと思いつつも、書き手の成熟した人生観が仄見えるような、という第一印象。もしも年若い方だったとしても、それはそれで細かな観察眼に敬服。一見手強そうな重量級の段落も、滞りなく読める文章力。

C04 なにも宿らない
人生の与える苦渋に翻弄される主人公の姿に、胸が痛み、目を覆いたくなる。その一方で、この「彼女」のように興味津々に鑑賞し、見物する目を離せない。限界を自覚し、環境を喪失し、それでも足掻かずにはいられない「私」の業と、気怠く悪魔的な「彼女」の、利害の一致がとてもスリリング。殺伐とした百合って…いいよね…(※個人の妄言です)。

C05 鏡の中にいて私の中にいなくてあなたの中にいるもの
和製児童向け小説調のふんわりホラー。ホラーではあるが、一人称視点の主人公が瓢箪なまずというか相当肝が太いので、風変わりな口調も相まって独特な雰囲気。よくある不思議は不思議のまま置いておく系かなと思っていたら、きちんとなぜ「手」なのかという論理を提示して締めるのが理知的で面白い。

C06 憎たらしい愛にさながら
遺族として葬儀を終えた後、一人になって一息ついた瞬間、どっと襲ってくる虚脱感がリアルだ…。目に入った何でもない家具や衣服から蘇る思い出たちが、疲弊した頭を駆けめぐり、身動きが取れなくなる辛さ。そこへ、明日へ進むことを促す妻の手紙。この展開に繋げる筆力が素晴らしい。

C07 迷い子の手
場面転換によって、最初の場面は過去の回想であることが判明し、実は一気に時間が進んでいて…という、この構成大好き!と思っていたら、今度は世界そのものが一転して…この次々繰り出される大掛かりな仕掛けが楽しい。あのとき触れられなかった手を今度こそ握って、遠く離れた幻肢がそれを感じる、この連鎖の美しさ。

C08 ナインティーン・イレブン
謎と女と銃弾を絡めた勧善懲悪劇。でも、英雄に大団円を用意するのではなく、刹那的な勝利と、行動の代償を印象づける結末がハードボイルドタッチ。文体もお洒落。二人の未来は正直明るくはないだろうけど、決断した瞬間の価値は損なわれない。タイトル回収も含め洋画の1シーンのよう。

C09 プディヤの祈りは銀の蝶になって
物語自体が一糸一糸丹念に縫い込まれた伝統工芸のようでうっとりする。燦然と光溢れる幻想的な民族ファンタジー。背伸びしても届かない幼い片恋の甘酸っぱさがかわいそかわいい。いじましい邪念の生んだ瑕疵を放置しきれず正しに走る姿勢に、未来の立派な女性当主の片鱗がうかがえる。

C10 奇病と難病
ゲーム内に介在するからこそ気楽にコミュニケーションを図れる「目隠し」に対し、現実世界に存在する防護服や心理的な隔壁。その向こうに遮断された者の遠さ。でも、突きつめれば、人間誰しも一切何のフィルターもかけず他者と接することなど不可能な訳で…だからこそ、最後の「ボク」の叫びや行動が胸を打つのかもしれないが。

C11 トゥルーエンド
カタカナ英語の題名なのに古代日本…?と思いきや、乙女ゲームオマージュか、なるほど。分岐を巧みに落とし込んだ筋立て。誰の手も取らない彼女が、誰に対しても語るのは郷土に対するこよない愛で、このルート選択によって究極的には誰しもと結ばれることになるという離れ技が面白い。